あらすじ
マリオの拳を潰した横山を本気で殴るアンチャン。それを見た他の三人が襲い掛かる。扉越しには石原が笑みを浮かべてその様子を聞き入っていた。
翌朝、八房の扉を開けた石原は、目の前の状況に凍りつく。八房の四人が床に倒れこみ、その奥でアンチャンがじっと石原を見据えていたのだ。状況を問いただす石原であったが、横山達は仲間内でもめただけだと口をつぐむ。彼らは、リンチにも屈せず、ただ仲間のためだけに拳を振るうアンチャンに恐ろしさを覚えていた。
慌てる石原に、六房の少年達を利用するよう提案する佐々木。石原は六房の少年達に因縁をつけ、罰を加える。自分の為に耐え続ける少年達を見たアンチャンは、とうとう石原に手を上げてしまう。涙が止まらない少年達。それ以来アンチャンは独房に入れられ、食事もろくに与えられなくなる。
石原達がアンチャンの出所を阻む理由は一年前の出来事にあった。その頃、二舎六房にはアンチャンと、母親の薬代欲しさに罪を犯した萩野栄一がいた。ある日、萩野が佐々木のところへ連れて行かれる。佐々木は石原に金を渡し、萩野を自分の好きなようにしようとしたのだ。これで出所が早まると聞いていた彼は歯をくいしばり我慢する。しかし、石原はそんなことは無理だと約束を無下にし、高笑いする。その翌日、この件を綴ったメモをアンチャンに託し、萩野は自殺する。そして、彼の死は事故として処理された。以来、アンチャンが何らかの証拠を握っていると考えた石原と佐々木は彼を出所させまいとしていたのだ。
独房に入れられて数日、一切飲まず食わずのアンチャンは衰弱しきっていた。
そこに、房を抜け出したスッポンが握り飯を持ってやってくる。不恰好な握り飯を涙を流してかぶりつくアンチャン。折れそうになっていた彼の心に再び生きる力が湧き出していた。
「今日の晩飯にはたくあん付いてたから中に入れてあんだ」